「夕鶴」の劇作家・木下順二さんを偲んで 国立市議会議員 小川ひろみ
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2006 年 12 月 1 日     カテゴリ:活動報告
「夕鶴」の劇作家・木下順二さんを偲んで

 木下順二さんが逝去されていたとの報道が、昨日、各紙の一面で伝えられました。皆さんのお目にも止まったことと思います。
 私は大学時代、卒論に「夕鶴」を選びました。その頃から、「夕鶴」のつう役・山本安英さんの劇団にお邪魔し、さらに縁あって、当時「子午線の祀り」を上演中だった「山本安英の会」の事務局で仕事をすることになりました。木下順二さんは、この劇団の柱ともいうべき責任者のひとりでした。山本さんの自宅兼劇団のあった千駄木の場所から1分の近さに木下さんは住んでおられ、毎日1度は顔を出されました。私は木下作品の大ファンでしたから、木下さんの来訪が嬉しいと同時に緊張したことを覚えています。
 『平家物語』を題材にした「子午線の祀り」という芝居には、「群読」という演劇的朗誦術が駆使されています。劇団でも、現代劇の俳優から能や歌舞伎の屈指の役者たちが一堂に会し、一斉に声を出す稽古がおこなわれていました。「子午線の祀り」の源平合戦のなかに、木下さんは「踏みしだかれる者」として庶民や女たちを印象深く入れています。個々の特長ある声が全体となり、またその全体は、ひとつも欠かすことのできない個々人が支えている……。「群読」という朗誦術によって、時代を生きる各層の人々が主体として立ち現われ、圧倒的な劇的感動をもたらしていました。あの日の千駄木の稽古場にも、声・声・声が響き渡っていました。
 「夕鶴」のつう、「子午線の祀り」の影身、「沖縄」の波平秀、「夏南方のローマンス」のとぼ助…、どの木下作品にも登場した女性たち。特別の階級であるとか、学問があるとかではない普通の女性たちが、与えられた境遇、立ちはだかる不条理、戦争などの政治的悲惨に巻き込まれながら、必死に何らかの決断を見出し行動していきました。戦時下日本においてスパイとして処刑された尾崎秀実を描いた「オットーと呼ばれる日本人」のオットーは男性ですが、どの主人公も架空の人物ながら、いまの私のなかでは確実に生きていて、ふとした場面で語りかけたくなる女性・男性たちとなっています。
 劇団民芸では、来春「沖縄」を上演し、偲ぶ会をその際に行うとのことです。いまはただただ、生涯を日本の劇文学と演劇に捧げ、厳しい20世紀を生ききった木下さんが安らかに眠られることを祈るばかりです。


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